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永遠のチェット・ベイカー

ジャズ
05 /13 2008
 むしょうにチェット・ベイカーについて書きたくなって上記のタイトルで書き始め、資料に目を通していたところ、はたと気付いた。今日13日はチェット・ベイカーの命日だったのだ。1988年5月13日、アムステルダムのホテルの窓から転落して死亡。当時、私は東京のスタジオで練習中に訃報を聞いた。前年、初来日を果たした際のステージを聴き損ねていたので、次回こそは、と思っていた矢先、二度と帰らぬ人となってしまった。あれから20年。ジャズ史上最もジャズマンらしく輝き続けたチェットの音楽は、ジャズは勿論、むしろジャズ以外のミュージシャンやファンにも愛され続けている。

 某ジャズ・バーで。「チェットのラッパはいかにも白人だね。ふやけてるよ」。そう言われても、私には人種で音楽を語る、という捉え方が理解できなかった。この店は駄目だな、と足が遠のいた。ある三流ミュージシャンはチェットとマイルス・ディヴィスを「ラッパ下手だね」と一刀両断した。お前の方が下手だろう、と思った。さすがに、近年では両者をテクニカル面で批判する無知な輩は見かけなくなったが、当時は評論家の一部でも「クリフォード・ブラウン巧い、チェット、マイルス下手」とする意見が少なからずあった。まず初めに、きちんと音楽を聴きなよ、と注意しておきたい。

 

ChetBaker.jpg

 

  しばしばマイルスと比較して語られることの多いチェットだが、マイルスがグループ全体でマイルス・ミュージックを表現していたのに対し、チェットは最後まで一トランペッターであった点、決定的にタイプが異なっている。その意味で終生「ジ・インプロヴァイザー」であり続けたし、ジャズマンらしい生涯だったといえる。幸せだったアメリカ西海岸時代から一転、歯を折られ再起不能に。その後、奇跡的に復活を遂げ、活動の舞台をヨーロッパに移し、各国でライブ活動を展開。その間、トランペットのテクニックが常に進化していたことは、残念ながらあまり知られていない。32分音符を吹き切る正確無比なフィンガリングとライブで聴かれる予想外にぶっといダークサウンド、相反してフルートと錯覚するサブトーン(フルートと勘違いする人は案外多いことが判明)。トランペットという楽器がこれほど表現豊かな楽器だとは思わなかった。

 

 

  そうした表現を味わうなら後期のアルバムに限る。私的には1974年レコーディングの「She was good too me」(邦題『枯葉』)以降のアルバムを後期作品と定義したい。後期、とは言っても、生涯約150枚のリーダー・アルバムのうち、約80枚が後期、つまり74年から88年の14年間に集中している訳だから、私のようにチェットの奏法研究者にとっては非常に有難いことだ。しかしながら、14年で80枚という異常なペースが示す通り、基本的にチェット自身、レコーディングに特別な思い入れを抱いていたとは思えない。やや行き当たりばったりのイージーさも窺え、実際にひどい演奏もあるにはあるが、ハロルド・ダンコ(p)、ミシェル・グレイリエ(p)、フィリップ・キャサリーン(g)あたりの、チェットのソウルメイトともいえるメンバーと演奏したものなどはさすがに内容もよく、誰にでもお薦めできる。

 

 

 後期の演奏に共通しているのは、そこには紛れもなく「チェット・ベイカー」というジャンルの音楽が確立されている、ということだ。ジャズでもない、チェット・ベイカーというミュージック。リッキー・パントージャとサンバを演奏、エルビス・コステロとポップスをレコーディング、ジャズでもアーチ・シェップやトニー・ウィリアムスなど方向を異にするミュージシャンとの共演も多いが、そんなことはまったくお構いなく、瞬時に場に溶け込んでしまうところが凄い。それでいて圧倒的な存在感はどうだ。

 

 

 生涯にわたって己の音楽を深く掘り下げたミュージシャンシップには頭が下がる思いだ。こんなエピソードがある。晩年、ビリー・エクスタインの演奏を店の一番奥で立って聴いていたチェットに対して、連れが「前で聴こうよ」と誘うと、チェットはややはにかんで「僕はミスターBの演奏を前列で聴けるほどのミュージシャンじゃないよ」と言ったそうだ。謙虚なんだな、と感じた。その謙虚さが、たゆまぬ進化を続け得た要因なのだろう。一方で映画「Let's get lost」の中では、「Almost blue」を演奏する前に、ざわついた客に対して「静かに聴いて頂きたい。この曲はそうした曲だから」とアナウンスするシーンがある。真面目なのだ、音楽に対しては。

 

 

 即興演奏といっても、例えばリー・モーガンが毎回同じ「チュニジア」をやるように、チャーリー・パーカーが「パーカー・フレーズ」をやるように、パターン化されてくるのが常だが、パターン化が目立たない点もチェットの特筆すべき特徴だろう。一瞬一瞬の中からフレーズを紡ぎ出す上手さに天才を感じられずにはいられない。横と縦のラインが絶妙に入り混じったアドリブは「ジ・インプロヴァイザー」の面目躍如たるものだ。余談だが、ジョアン・ジルベルトがボサノバを創造する際にチェットの歌い方から大きな影響を受けたことも記憶にとどめておきたい。

 

 

 現在、チェットのディスコグラフィーを制作中で、完成次第「なんぼ公式サイト」にアップする予定。20周忌のレクイエムも込めて。

 

 

 

 

 

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コメント

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チェット・ベイカー、大好きです。
トランペットがこんなに素敵な楽器であることに気付いたのは、チェット・ベイカーのあの音、フレーズ、空気とか、に触れてからです。(ハイノートとかバリバリのバップとかあまり好きじゃないもんで・・・)

チェット・ベイカーの音楽を聴いていると、その時の色とか風景とか、情景が浮かんでくるような、そんな気がします。この一瞬じゃなかったら創れなかった音楽、というか。本当にチェット・ベイカーの音楽だなぁ、と感じます。

ディスコグラフィー、楽しみです♪♪♪


 ディスコグラフィーは結構気合の入った作りなので時間がかかりそうです。気長にお待ち下さい。チェット・ベイカーって改めて不世出のトランペッターだなと感じますね。

jazz bird

ライフワークはジャズ・トランペット。好きなトランぺッターはトム・ハレル、チェット・ベイカー、パオロ・フレス、市原ひかりさん、山本ヤマさんetc.夏の海が好き。

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