松江ぽえむの面影

ジャズ
12 /28 2016
 その日の昼前、いつも通らない道をたまたま通った。松江市の大橋南詰め。この時間にここを歩くことなど後にも先にもこの時だけしかない。角の建物の前にひっそりと停まるパトカーと救急車。僕は職業柄、事件があったのではないかと直感した。車両はひっそりと停まっているのだけれど、警察や急救関係者の動きはぴりぴりしていて、遠目にも緊張感が感じられるのだ。
 案の定、建物2階で変死体があった。変死、といっても、病気とか原因が特定できない場合、変死扱いは珍しいものではない。おそらく中で亡くなっていたのだろうなと思ったが、その通りだった。松江の老舗ジャズ・バー「ぽえむ」。その中で亡くなっているのであれば、マスターをおいて他に誰であろうか。僕は「招かれた」と率直に思った。そう、マスターはジャズ・トランペッターが好きだったのである。運良く、僕は気に入られていた。ビールをがんがん飲んでいたからかもしれない。とにかく、一時は週に数回通い、夜な夜なジャズ談義に耽り、月イチのペースでライブをさせてもらっていた。年末にはマスターオリジナルの鍋を囲んで夜通し飲んでいた。

 だから、招かれても特段不自然には感じなかった。晩年、もっと顔を出せば良かったなどと、悔やまれることもあるが、生活で精いっぱいで余裕がなかった。

 今、この場所は地元商店主有志が地域興しの意味も兼ねて、週末を中心にマスターの意を継ぐ音楽バーを営んでいる。友達のライブに行ったが、懐かしい空間だった。あの頃の気分や、窓を開けた時に大橋川から吹いてくる優しい初夏の風・・写真家の森山大道さんと偶然にお会いしたのもここだった。いろいろな想いが巡る。

 マスターに対する恩義もあって、やはりこのステージで演奏したいという思いがある。一方で、したいだけではいけないな、という思いもある。多少、いいパフォーマンスをしたいと思う。躊躇する気持ちもあるが、やりたいという気持ちもあって、少しずつ練習をしている。来年、機が熟せばと思う。
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jazz bird

ライフワークはジャズ・トランペット。好きなトランぺッターはトム・ハレル、チェット・ベイカー、パオロ・フレス、市原ひかりさん、山本ヤマさんetc.夏の海が好き。